イルミがうちの家を訪ねてきた。


それはとても珍しい。だっていつもはメールで呼び出すとか、もしくはあたしがイルミん家に行くとかが多いのだ。
イルミは滅多にあたしの家にはこない(興味がない)のに、なぜ今何の連絡もなしに訪ねてきたのだろうか。




「い、いらっしゃい」


「やぁ、あいかわらず狭い家だなぁ」



「ねぇ、鍵どうやって開けたの?」


「合い鍵だけど?」


「いつの間に・・・!」



「嫌だなぁ、恋人の家の鍵持ってるなんて当然じゃないか」




涼しい顔でイルミは言う。



「うぁぁ、いつから恋人に・・・」


あたしの呟きを聞いて、イルミの目がぴくりと動いた。

あ、また機嫌が・・・。



「まだ結婚もしてないし、恋人でしょ?」



婚約くらいはした方がいいかな?と思案しながらイルミは首をかしげる。




「うー・・ん」


先日、結婚すると一方的に決められてから、どうもイルミの態度が以前と違ってきた。今まではあたしの話を聞いてくれる知り合いだったのに、最近はやたら会いにきたり物をくれたり、好きだとか言ってみたり恋愛要素をたくさん取り入れてきている。


イルミ曰く「もう遠慮とかするのいいかな、と思って」という事らしくて、こんながっつりした奴だとは思ってなかったからびっくりする。




「何、まだ納得してないの?」


「うーん」


はいつも悩んでるよね」


イルミが少し嫌味の意味を含めたように言う。そうだ、最近はあたしに対して少し短気な部分もある。もっとおおらかなイメージがあったのになぁ。
でも、あたしだってプロポーズ?的なことがあってから、ぼーっとしてたわけじゃない。自分の気持ち、イルミのこととちゃんと向き合おうって思って考えたりした。


今日も何しに来たのかわかんないけど、一応自分の気持ちも言っておいた方が良いだろう(だってそうじゃなきゃどんどん話を進められそうでこわい)と思ってイルミの方に体を向けた。





「あたし、イルミと結婚するの嫌じゃない」


「嫌とか嫌じゃないとか、に選択権はないのになぁ・・・で?」


イルミが恐ろしいことをつぶやきながら話を促す。




「でもやっぱり、あたしの意見とかも聞いて欲しい」



第一にあたし達の関係が結婚というまでのものに発展していないこと、一般人のあたしにはゾルディック家で同じような生活をするのは難しいということ、前にイルミに話したようにあたしだってそれなりに理想を持っていること、その他いくつかの不安に思っていることを正直に説明していく。
イルミはいつものあの表情で、うんうんと相づちを打っている。(でもこれは、聞いているのかそうでないかわからない。)





「じゃぁ、結婚前提にお付き合いする?」


あたしが話し終えた後、イルミはみごとにあたしの話を要約して簡潔な答えを出した。
合理的な奴だなぁ。


でも世間にはお見合い結婚とかもあるし、あたしがあのお茶した日からイルミのことが気になってしょうがないのは事実だ。




「うん。あたしもね、考えてたんだけど、イルミのこと好きだと思う」


イルミの目がきらりと光った。(気がした)
そして、イルミがぐっと近づいて、両手をあたしの肩にかけた。



、もっかい言って?」


「イルミ、肩痛い痛い!目、怖い!!」


今度は気のせいじゃなくイルミの目がきらきらと輝いていて、でもそんなイルミはキャラが違うのであたしには恐怖でしかない。




あ、ごめんとつぶやいてイルミがあたしの肩から手を離す。



「いや、あたしも・・・流れで変なこといっちゃって。」


「なんだ、流れか。落ち込んじゃうなぁ」


「あ、好きなのはほんとなんだけど、」


「ほんと?」


受け答えをするうちに、イルミってなんだか面倒くさい奴だな。と思う。






「俺も好き」



ほんとにこの人殺し屋なのかなぁとイルミのキスを受け入れながら、うっすらと疑問を抱いた。