「ユウジくんはなんであたしと付き合ってんの?」 「小春が付き合え言うたからや」 あたしが死ぬほど悩んで喉から押し出した質問に対するユウジくんの言葉はあっさりとあたしの気分をどん底に落ち込ませた。そんなあたしには興味がないのか、ユウジくんはまっすぐ前を見たままだ。 「小春ちゃんが付き合え言うたから付き合ってんの?」 「それ以外なにがあんねん。」 「小春ちゃんが死ねっていうたらユウジくん死ぬん?」と聞いたら、「しょーもないこと聞くなや」とそれ以上あたしとは目を合わせてくれなくなった。 付き合ってるというのはあたしの思い込みかもしれない。あたしはユウジくんのことが好きだけど、ユウジくんはあたしのことをどう思っているかよく解らない。 一週間前に、これで最後にしようと自分の中で決めて「あたし、ユウジくんのこと好き」と言ったら、ユウジくんはあっさりと「ほな付き合う?」とこちらに視線も合わせずに呟いた。 予想外の出来事に声も出ずに無言で頷いたあたしは何回も自分の頬をつねったり、舌を噛んでみたりした。嬉しさに嬉々として登校した翌朝、「おはよう」と声をかけたあたしをユウジ君は横目でチラリと見ただけだった。 それからは特に何があるわけでもなく、あたしがユウジくんに一方的に話しかけにいっているだけだ。今までと何もかわらない。 「ユウジくんはうちのことどう思ってんの?」 「・・・別に。何も思てへんけど。」 あたしの質問にしばらく間をおいてユウジくんは答えた。 どうせならあたしの目を見て言えばいいのに。ユウジくんの意気地なしと心の中で毒づく。あたしはユウジくんがいつ本当のことを言っていて、いつ嘘を言っているのか解らない。その上、「じゃあなんであたしと付き合うなんて言ったの?」という諸刃の剣を使う勇気も持ち合わせていない。 「なんでお前と」がユウジくんのあたしに対する口癖で、あたしが何か誘う度に必ず冒頭にこのフレーズがつく。でも結局、一緒にいてくれたりもする。(それの半分はあたしがしつこく付きまとうからかもしれないけど) 今だって、一緒に帰ろうと声をかけたら「お前歩くん遅いから嫌や」と言われてうつむいたあたしを「さっさと歩けや。はよ帰りたいねんから」と叱咤してこうやって一緒に帰っているし、結局ユウジくんはあたしの歩く速さに自分の歩幅をあわせてくれている。 そんなユウジくんをちらりと横目で見て、本当は、と思う。この緩めてくれている速度も、あたしがあげたお土産のキーホルダーを「何やねんこれ。」と言いながら鞄に付けてくれてるのも、自分の家から多少遠くなっても人通りの多い道まであたしを送っていってくれるのも、ユウジくんの優しさなのかと。目つきは悪いけど本当は優しいユウジくんの、人に対するじゃなくてあたしに対するやさしさ。そう思わなきゃ、やってられない。あたしはユウジくんのそばにいても、離れている時と同じくらい暗い気持ちになる時がある。 「ユウジくん、」 「何?」 「ちゃんとしようね」 「何、”ちゃんと”って」 「色々だよ」 「解るでしょ」と付け足せば、それ以上ユウジくんからは何も返ってこなかった。 「気にいらんねやったらもう俺に近づくんやめて」と言われるかと思ってビクビクしていたあたしはその反応に少しだけほっとする。 これからの関係について、あたしも考えるしユウジくんも考える。それができたらあたし達にだって幸せになる希望がある。そう思わなきゃやってられない。 -------------------10.06.11 リクエストありがとうございました! チカさんに!マシュデリより5年間の愛をこめて!ヒナ |