うちの部長とその彼女

 



跡部の彼女が救急車で運ばれたって。階段を踏み外して落ちたらC。
で、私用で学園にいなかった跡部は、出先でそれを聞いて動揺してヘリ飛ばしちゃって。でも跡部ん家のヘリより、救急車のが早かったからは救急車にのって病院に行ったらC。
飛んできたヘリには仕方ないから、ちょうど学園に帰ってきた(タクシーで)跡部が乗って病院に行ったみたい。

俺その時寝てたから、救急車のサイレンもヘリのプロペラ音もうるさすぎて、まじで迷惑だったけどね。(滋郎)









跡部部長に頼まれて、昼休みに救急車で運ばれたさんの学園にあった荷物を病院に持ってきた放課後。何故、俺がこんなこと。樺地にやらせるべきだろうと思ったが、樺地は跡部部長が途中ですっぽかした会合の後始末に終われてるらしい。俺は召し使いじゃないんだぞ、下剋上だ。

さんの病室は広い個室でソファーが置いてあり、簡単なキッチンまでついていた。
あきらかに跡部部長の息がかかっていた。
病院のものとは思えない様なサイズのベットに横たわったさんは、左足の付け根から指の先までギブスを巻かれていた。ちょっと気の毒だと思ったが、後から来た医者が「すねの所ちょっと折ってるだけだから、膝下だけで良いのに。」と呟いていたから、俺の下克上する気がちょっと萎えた。(日吉)











昨日、救急車で運ばれたが今日は来てないから、跡部に聞いたら入院中だって言うじゃん。大変な怪我だったのかと思ったら、跡部が大事をとって入院させてるみたい。相変わらず甘やかしてるなぁ。
よく聞いてみると、跡部も一緒に病院に泊まってるらしい。あの跡部がソファで寝たんだって。そこまでさせるなんて、やるねー。(滝)















の見舞いに来てみたら、ちょうど太腿まで巻いてたギブスが膝下まで取れたところやったらしい。
なんや、ずっとギブスで固定された膝が固まってしもてて、ちょっとずつ曲げていって元通りにするみたいやった。看護婦さんが「はい、じゃぁちょっと曲げてみようねー」って優しく言うたびに「痛い!」とが声をあげよる。でもあいつ、全然膝曲げてへんねん。絶対、やる気ないやん。跡部はが痛いゆうたびに「…見てられねぇ!」とかゆうて顔背けてるし。

結局、跡部が苦しそうに胸を押さえながら言った「…もう良い、止めてやってくれ。」の一言でそれは終了した。始まってから、3分くらいの出来事やった。


の膝がどうなったかっていうと、次の朝に一緒に病院に泊まってた跡部の携帯のアラーム(朝練用)が鳴って、がびっくりして起きた拍子に一気に膝を曲げてもうたらしい。本人いわく、言葉にはできへん痛さやったらしい。大喧嘩になったらしいけど、膝はすっと曲がる様になってんて。どうでもええけど、が治さなあかんのは膝ちゃうからな、折れたスネやからな。(忍足)











廊下を歩いてたら、車いすに乗ったに会ったぜ。今は病院から学校に通っているらしい。不便そうだな。と思ったけれど、病院での様子や学校まで跡部に送り迎えしてもらってるらしい。
「介護されてるじゃん。」とからかったら、タイヤで足を踏まれた。いてぇっつーの!お前元気じゃん!!(岳人)













長太郎と一緒に病院に行ってやったら、が松葉杖で歩く練習をしているところだというので、リハビリ室とやらについてってやった。松葉杖ってそんな難しいもんでもねぇだろ。
相変わらず、なまっちょろいは何もしないうちから「もう辛い…」とか言ってやがるし、跡部は「無理するなよ、。また痛めちまったら元も子もねぇからな。」と寝ぼけている。


リハビリの先生らしき人が「ちょっと彼氏くんは優しすぎるなぁ。」と困った顔をしている。遠回しに”甘やかす跡部は邪魔”と言われていることに気付かない跡部に俺は提案する。

「おい、跡部。お前がいたらが甘えるだろ。席外せよ。」
「あーん?じゃぁ、誰がを見守るんだよ?」
「俺が見ててやるよ。」
「バカ言うな。お前のがさつな根性論でをつぶすつもりか。」
「あーわかったよ。俺も外す。そん代わり長太郎は残す。それで良いだろ。」


心配そうな顔でを見ている長太郎を横目で見て、跡部は不満そうにしながらも頷いた。も長太郎だったら、叱咤もされなさそうだと、機嫌良く俺らを見送っていた。(宍戸)












リハビリ+鳳くんのコンボは、すごく辛かった。骨折して痛かったし、固まった膝が曲がる様になるまで本当に大変だったけど、正直この時が一番辛かった。

鳳くんは優しい口調で「じゃぁ、先輩、ここまで歩いてみましょう。」と言うのだ。慣れない松葉杖を使い、頑張って鳳くんの所まで歩いていってもう少しで到着、という所で彼はすすすっと後ろに下がるのだ。「え?」ってなるあたしの目をまっすぐ見つめて「さぁ、先輩!もうすぐゴールですよ!」と励ましてくれる。
でも、いくら歩いてもゴールには着かない。ゴールは動くのだ。「ちょっと休憩しない?」と聞いても「はい!もう少しやったら、休憩にしましょうか!」と言ってはくれるのだが、そのもう少しが全然来ない。
優しそうに見えて、あの宍戸が直々に鍛えてるだけあるわ。跡部なら、3歩くらいで「お前は充分頑張ったぜ。」とか言って抱きしめてくれるのに。(













リハビリをすごく頑張っていたので、先輩はすぐに歩けるようになっていました。宍戸さんと一緒に戻ってきた跡部部長が先輩の成長ぶりに感動で泣きそうになっていたのには、二人の愛を感じざるを得ません。先輩は疲れ切っていたけど、跡部部長には何度もお礼を言われました。人の役に立てて嬉しいなあ!(鳳)












夜に跡部から「明日はが退院する日なので、部活は休んで自主練に切り替えます。」と連絡があった。部員達のメニューは樺地に指示を済ませているとのことだ。やれやれ、あの跡部もの前では形無しだな。行ってよし。(榊太郎43)













のギブスが完全に取れた。
階段から落ちたと連絡を受けた時は心臓が止まるかと思ったが後遺症もねぇみたいだし、とりあえず一安心だ。
もしが歩けなくなったら、俺様が一生あいつの足になってやろうと決心したし、今回のことでの大切さを改めて気付かされたぜ…。
そうだな、あの階段は補修工事させとくか。もっと強力な滑り止めを付けないと駄目だな。ついでに手すりもかえておくか。
そういや、あそこの壁の色はくすんでいると思っていたな。だからが足を踏み外してたのかもしれねぇ、塗り直すか。

しかし、が落ちたときは周りに誰かいたのか?もし、下に俺様以外の男がいたらの下着を見た可能性も否めねぇってわけだ……………おい、樺地!!が階段から落ちた時の現場を検証しろおおお!!(跡部)













氷帝は今日も平和です、ウス。(樺地)















(おまけ)
今度の合同合宿の打ち合わせを各校の部長同士でしていると、樺地くんが入ってきた。打ち合わせ中により、携帯のつながらなかった跡部に緊急の用だという旨を伝えて。
樺地くんに耳打ちをされた跡部の顔色がみるみる変わっていき、何事かと思ったよ。 「それで?容態はどうなんだ?」「…………ウス。」という二人の会話から、家族の人か誰かが危篤なのかな?と悟った俺が「跡部、ここは良いから早く病院に。」と言うと、跡部はすまなそうな顔をした。 「樺地をここへ残していくから、事務的なことはこいつに伝えてくれ。」と言い残して跡部は、サッと格好良くブレザーを羽織った。動揺のあらわれなのか、ルドルフの赤澤のやつと間違えて着てた。しかも裏返しだったけどね。そして携帯で「俺だ、今すぐに学園にヘリを回せ。一刻も早くだ!」とまるで洋画さながらに、その場を後にした。え?学園にヘリ?樺地くんを見ると彼にしては珍しく気まずそうな表情を顔にのせて「跡部さんの彼女が怪我をしたらしいです…。」と言いにくそうに事情を説明してくれて 小さな声で「階段の三段目…くらいから…落ちただけらしいんですが……すみません…。」とその場に残された俺たちに謝ってくれた。まぁ良いけどさ、あんな珍しい跡部と樺地くんみれて面白かったし。跡部の弱みは握ってて損なことはなさそうだしね。あーうらやましい。









-----------------2012.03.20
骨折とかリハビリに対して、全く知識がないので想像で書きました。