『今から跡部ん家いくから!』


夜の11時半に携帯にからメールが入った。


何考えてんだよ、と思い返信もせずに 読みかけの洋書に意識を戻して15分。


携帯の着信がけたたましくなり、ディスプレイには『』の文字。


まさかと思って玄関をあけると、案の定いた。 







恋だとか恋じゃないとか A











(なんでお笑いのDVDでシアター使おうとしてんだよ)







ふと窓際に目をやると、昔が土産だと持ってきたナマハゲが目にうつった。


もうだいぶ長いことあの場所にある。



あれが置かれた時と今じゃ、俺達の関係は変わってしまったなと、自嘲気味に笑った。











いつだっただろう、



のことを可愛いと言ったやつを殴ったのは。


母親が「もうちゃん、すごく可愛い女の子になって」とニコニコして言っていたのは。













その頃は 昔とは違うをみるたびに胸がムカムカした原因がわからなかった。





俺はそのムカムカを振り払いたくて、ただ何となく嫌いじゃないからとマネージャーと付き合った。

同じ理由でここまできた。








そのころだ。

なんとなく、が話しかけてこなくなったのも 呼び方が景チャンから跡部に変わったのも








ムカムカする気持ちのわけに気づいたのは クラスメイトに囲まれて笑うを見た時だ。




今更気づいても、手遅れだったしこの関係を壊す度胸も俺にはなかった。
















「あたしのこと、すっごく理解してくれる人と付き合うの」




急には俺の方に背中を向けたまま呟いた。






俺はその言葉に



「いんのかよ、そんな奴」




俺以上に、お前のこと解ってるやつなんかいんのかよ












「いるよ、跡部とか」









ああ、そうだ。

 こいつがこの部屋に来なくなったのは俺が今の女と付き合いだしてからだ。


その前にも何人か付き合ったが、しらねぇだろうし。こいつなりに気ぃ使ってんだと思ってた。


その頃から、は結構色んな奴と付き合ってはすぐ別れてやがるし。







どうして気づかなかったんだ。







相変わらずの背中は動かなかった。

スピーカーからはこの場には不似合いな笑い声が絶え間なく続いていた。











「早く言えよ」




「跡部が先に言うの待ってたの、このヘタレ」




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2005.09.27