あたしの彼の鳳長太郎は、髪型を少し変えただけでもすぐに気付いてくれて「あ、。髪型かえたんだ、すごく似合うよ。」って言ってくれるし、アレンジしていったら「今日はいつもと違うと思ったら、髪あげてるんだね。そういうも良いな。」学校に着ていくカーディガンを新しくしたら、「その色、とってもって感じ。俺好きだな。」と大きな変化はもちろん、ちょっとした変化でもすぐに見つけて褒めてくれる。



長太郎と付き合っていると、お洒落のしがいがあるし、周りからも「って、鳳くんと付き合ってから可愛くなったよね、いいな〜」なんて言われる。
そりゃ、長太郎みたいなかっこよくて優しい彼氏が隣にいるんだから頑張っちゃうよ!






























また髪型を変えてみた。昨日、美容師さんに「結構、雰囲気変わったね」と言われたくらいイメチェンしてみたから、ちょっとみんなの反応が不安。






でも、自分では気に入っているし家族にも評判良かったし、何より、彼氏の長太郎は絶対に褒めてくれるもん。
ウキウキ気分で登校したら、1階の廊下で跡部先輩に会った。長太郎を通して顔見知りなあたしは、「おはようございます」と挨拶をする。跡部先輩は「よう」とあたしを見て「いいじゃねーか、その髪。」と笑顔を作って新しい髪型を褒めてくれた。






跡部先輩にも褒められたし、教室に入ったらクラスの子達にも良いね、と言われた。やったね、イメチェン大成功☆
長太郎の教室にも行こうと思ったけど、予鈴が鳴りそうだったので後にしようと思って訪れた昼休み。






「長太郎!」



一緒にランチをとろうと、長太郎の教室に入って自分の席に座っていた彼に声をかける。長太郎はあたしの声に振り向いて、一瞬驚いた様な顔をした。





「ああ、か。一瞬誰だかわからなかったよ。」

「そう、髪型変えたの。似合う?」

「うん、似合うよ。」




長太郎はあたしを見つめながら頷いた。いつもの様に笑顔でにこにこしているけれど、あたしはなんだかもやもやとしてしまう。だって、いつもは「すごく似合いすぎて驚いた。」とか「のためにある髪型だね。」とか、似合う+αがついてきて、ちょっと褒めすぎじゃない?ってくらい褒めてくれるのに。






「…あんまりかな?」

「そんなことないよ、似合ってる。」

「ほんとに?」

「うん、とっても。でも、俺は前の方が好きかなぁ。」






でも、の後に続いたその言葉にあたしは大きなショックを受けた。そりゃぁ、他の男の子が言えば普通の言葉なのかもしれないけど、長太郎だよ?否定の”ひ”の字も言ったことのない長太郎の「前の方が好き」だなんて!





「………!似合ってないんだ!!」と取り乱したあたしに長太郎が慌てて訂正する。





「似合ってないとは言ってないだろ!」

「だって長太郎、前の方が良かったんでしょ?」
         
「良かったけど、今も素敵だと思うよ?」




「じゃぁ、しばらく今の髪型してても良い?」

「………。」



その沈黙はあたしの今の髪型が長太郎にとって”好みじゃないけど可愛い。”じゃなくて、”結構苦手”だということを悟るのに充分だった。





「い、嫌なら嫌って言えばいいじゃない!!」

「嫌なんて言ってないだろ?」

「じゃぁ、好きなの?」

「……………好きだよ!」

「嘘じゃん!」








「長太郎、思ってもないのに良いとか言うの、止めた方が良いよ!そういう所、なおした方が良いよ!」




その後はなんていうかもう戦争でした。最終的に「その髪型、今までで一番好きだよ。」と絶対思ってないことを真剣に言い出した長太郎に、あたしは「絶対うそじゃん。」と不信感をぶつけまくるし、「長太郎、顔にでやすいんだから思ってもないこと言わない方が良いよ。」って一言が彼の何かに火をつけたのか、樺地からバリカン(こないだの夏に跡部先輩の断髪に使用)を奪い取り、「そんなに言うなら、俺の誠意を見せるから。」と自分の頭を刈ろうとしていたり、それを止めるあたしに「ほら、だって俺が変な髪型してたら嫌だろ?」とここぞとばかりに勢いを付けてくる長太郎。「何それ、あたしのこの髪変が変だってこと!?」とかで大変でした。周りが。












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だんだんどっちもバカになってきた。