昨日、髪を切った。揃えるだけだったにも関わらず、岳人くんは教室であたしに会うなり「おー、髪切ったんだな?良いじゃん、似合ってるぜ」と100点の答えをさらりとやってのけた。あたしが照れてるのを気にもせずに、岳人くんは自分のクラスの男子を見つけて、そっちへ行ってしまったのはちょっと寂しかったけど、さっすが岳人くんだよね!

























始まりが良いとその日はずっと調子が良い。ましてや大好きな岳人くんがあたしの小さな変化も見抜いてくれて、褒めてくれるなんて。1限目の数学の小テストも良くできたし、3・4時間目の合同体育でやったフットサルでゴールも決めたし絶好調だ。


で、岳人くんに半分あげようと思って唐揚げを買いに来た昼休みの購買で、岳人くんのテニス部の後輩である若くんに会った。岳人くんと忍足くんと放課後にたこ焼き食べにいったりする時に、たまに若くんもいるので結構知った仲だ。
それにしても若くんを購買で見るのって珍しいかも、なんて思っていたら「跡部部長に用があって」といつもラウンジで昼食をとっている跡部くんのところへ行く途中だったらしい。









「あ、そうだ。若くんあたしに何か言うことない?」

「何もないですけど」

「即答しないでよ、何かがいつもと違います!」






あたしが突然言ったその言葉に、若くんは「はぁ」という気の抜けた返事をした。
気の抜けたっていうよりは、あんまり乗り気でないような。それでも若くんはあたしをしばらく眺めてから「何も変わってないように見えますが…」と首を傾げた。










「髪切ったんだよ」









正解は、とあたしが自分の髪を指して言えば、若くんは驚きも見せずに口を開いた。









「俺も昨日、髪切りましたよ」


「ええー!?どこを!?」









若くんの衝撃告白にあたしは驚きを隠せない。だって一昨日、岳人くんを待ってた部室で若くんと話したけど、その時と1oも変わってないと思う。










「その目の上のラインとか、全く一緒じゃん…」









あたしが呟いていると、若くんは「これだから鈍感な人は」というような顔つきでため息をついた。あれ、意外に髪型こだわる方なの?










「それにしても、流行ってますね。髪切るの」

「えーそうなの?」










若くんの言葉に「あと誰?2年の子?」と聞いたら若くんは変な顔をした。










「…向日さんも切ってましたよね?」











あたしは考えを巡らせる。岳人くん、朝会ったけど切ってたっけ?あたしに「髪切ったのか」とは言ってくれたけど「俺も切った」とは言ってなかった気がする。










「…切ってないよね?」

「二限の後に廊下で会って、俺に”若も切ったんだな、俺も切ったんだぜー”って頭触ってましたよ」










あの人もあんまり変わってませんでしたけどね。と付け足してから、若くんはすこーしだけ軽蔑の入った眼差しであたしを見た。彼女のくせに気付かなかったんですね、みたいな感じが伝わってくる。岳人くんがちょっとスルーされたからって先輩の彼女に対してそんな目をできるなんて、こんな態度しててもさすが後輩だよね。上下関係がしっかりしているわ。












「岳人くん!」

「おー、。どした?」

「髪切ったんだってね、ごめんあたし気付かなくて」










「あーこれか。別に良いよ。揃えただけであんまり変わってないしな」









なんて言って自分の前髪を触って、何も気にとめてないような岳人くん。あたしなんて気付いてもらえなかったら、えーって思っちゃうのに。あ、でも岳人くんは割と気付いてくれるから、岳人くんにえーっなんて思ったことないよね。
やっぱり岳人くん好きだなーなんて再確認して、買ってきた唐揚げを差し出すと「お、唐揚げじゃん、ナイス!」といたずらっぽい笑顔を見せてくれた。あたしが髪切ったのを気付かなかったことなんて、本当に気にしてないみたい。それを言ったら「別に良いって、俺そういうのどうでもいいから」と唐揚げを頬張っていた。







-----------------------2012.05.19
岳人は女の子<男友達だと思う