言うんだ、 「跡部、今日たんじょーびらしいね、おめでとっ!」 って。ごく自然に。 (ホントはずっと前から知っていて、携帯のスケジュ−ルにもちゃんといれてるけど) アタシはプレゼントを渡す度胸なんてないから、せめて一言だけでも言うんだ。 クラスも違うし、女の子に大人気の跡部だけど、一言だけなら・・・ Please kiss me! 朝練終わりを狙ったら、女の子達に囲まれて無理だった。 いつもすれ違って軽い言葉をかわす休み時間は、今日に限って会わなかった。 「ぇ、全然ダメじゃん・・・」 そうして最後の授業まで跡部と会わないままきてしまった。 「跡部君の教室にいけばいいじゃん」 隣の席の友達がボソリと言った。 「わざとらしいのは嫌!あくまでも偶然を装うの!」 アタシは拳を握りしめて、放課後にむけて気合いをいれた。 と、同時にチャイムがなった。 同時に先生も言った。 「ぁ・、お前この前掃除来なかっただろ?今日一人でしろよ。この後スグだ」 「でぇぇぇぇ!?」 アタシが先生の監視下でしっかり掃除を終えた頃には、部活なんてとっくに始まっている時間だった。 きっと強豪テニス部も始まっているだろう。 部活の後は、また女の子で溢れてるだろうし、それに混じって言うなんてわざとらしすぎる! 普段は冗談を少し言うだけの仲だし、今日はホントに一言だけでもお祝いしたかったのに! アタシはトボトボと教室に戻った。 もう鞄を取って帰ろうと教室をあけたら、中には何故か跡部が一人で立っていた。 「!!!」 「よぉ」 びっっくりするアタシに跡部は表情を変えずに言った。 「ぇ、跡部何でいるの?」 「慈郎を探してんだよ」 アタシが聞くと跡部は少し視線をハズした。 綺麗な顔だなぁ、なんて思ってる場合じゃない! 「あ・今日、誕生日なんだってね」 と 口から言いたかった言葉を押し出した。 跡部は「へぇ、よく知ってたな」って言った後に 「で、からプレゼントは?」 って、言った。 どうしよう、金持ちの跡部がこんなこと言うなんて予想外だった! 「ぇ、ぁ、用意してたけど忘れた!!」 「・・・へぇ」 アタシが苦し紛れに嘘をつくと、跡部は疑いの眼差しをむけた。 バ レて る ! ! 「跡部はアタシがあげなくても何でも買えるじゃん」 口をとがらせて訴えたら、 「自分で買うのと人に貰うんじゃ違うだろーが」 って、跡部らしくもないことを言うもんだから、 「女の子達にいっぱいもらってるくせに」 自分で言って、ちょっと悲しくなってしまった。 跡部は自慢げに 「ま、俺様はもてるからな」 ってもともと高い鼻をもっと高くしていた。 アタシは悔しかったしヤキモチも妬いてしまっていたので、拗ねたふりをして 「どうせ、アタシがあげたって嬉しくないでしょ!」 って跡部を見上げたら、跡部の顔がぐんっと近くなって、ビックリしていたら キスされた!! 「・・・!!?!?」 「これで許してやるよ、プレゼント」 呆然とするアタシに跡部はニヒルな笑いを浮かべて言った。 信じられなかった。 「好きでもないのにキスすんの!?」 怒ってそう叫んだら、跡部は一瞬「はぁ?」って顔をした。 「なんでそうなんだよ、可愛かったからやったんだよ」 少し視線を外して、口元を手で押さえた跡部の耳は少し、ほんの少しだけど赤くなっていた。 アタシはそんな跡部の様子に、すごい事実を悟ってしまった。 ・・・こいつ、芥川君探しに来たんじゃなくてアタシを待ってたのか・・・ どうしよう、可愛い。 跡部はそのまま固まっている。アタシは跡部の違う面を発見して嬉しくなって、 「おめでとう、プレゼントだよ」 一番言いたかった言葉を伝えて、跡部にキスをした。 「バーカ」 アトベは素直にキスされた。 ---------------------------2005.10.04 おめでとっ! |