最近、日吉君の視線が怖い。
いや前から怖かったけど、今は『そーいう意味』で怖い。




                 ビネガー味。












この前、二人で残ってる時に「可愛いと思ってる」とか言われて、
焦ったあたしは「ぁぁぁぁぁありがとうっっ」ってどもりながらお礼を言った。
その後はただただ沈黙だった…





別に好きだとか付き合ってとか言われたわけじゃないし…
(そうだよね、可愛いからって好きになるわけじゃないし)



何であんなこと言われたんだろ?
もしかして冗談?でも日吉君は冗談なんか言うタイプじゃないしなぁー…






あの日からあたしはずっとそんなことを考えている。



そしてすごーく日吉君を意識してしまう。




授業中だって斜め前の前に座っている日吉君は嫌でも視界に入ってくるし。












(やだなぁ)





「おい、



「わぁぁ!キノコ君!?」







溜息をついて、教室を出ようとしたらいきなり声がして、顔をあげたら日吉君だったのであたしはすっごく驚いたうえにすっごく失礼な言い間違いをした。



日吉君の眉間の皺がえらいことになっている。ヤバイヤバイヤバイ




「きょ、今日も素敵な髪型だね!」



「………………」



「……な、何か御用でしょうか?」




あたしが恐る恐る聞くと日吉君はその継ぐんでいた口を開いた。






「この前の事なんだけど」




(こ、この前って例の放課後ですか?いや、あたしと日吉君の浅い歴史の中ではそれしかありませんよねっ!?)





あまり掘り出したくない記憶に触れられ、喋れなくなったあたしを無視して日吉君が続ける。




「返事ききたいんだけど」


(やっぱりそーいう意味だったのですか!)



日吉君の一言で今までぐるぐると悩んでいたものは吹っ飛び、さらにその上をいく悩み事がのっかった。





(ど、どうしよう、日吉君怖いし。わー睨んでるよ)



何も言わないあたしにいらついてるのか、日吉君はすごく怖い目付きだ。







「な、何のこと?ごめん、全然覚えてないなぁ……」





悩んだ末、あたしの頭にでた結果は“無かった事にしてしまえ”だった。



これで何とか乗り切れれば良いなとか思ったんだけど
そんな考えは甘かったと次の日吉君の答えに思いしらされた。






「あれ、一応お前を好きってことなんだけど」





表情を変えずに言った日吉君にあたしは立ちすくむしかない。




え?何でこの人告ってる(んだよね?)にも関わらず何でこんなに冷静なの?

っていうか、すっごい怖い顔なのはなぜ?




あたしがなんかもう主旨とは大きく違うことに頭を使っていると、また日吉君は最上級の不機嫌さで



「で、どうなんだよ」



と、答えを求めてきた。







「えっと・・・あー・・・」




あたしはなんて言っていいかわからない。


すると、グズグズと喃語のようなものを発するあたしに日吉君は一言。








「断ったら、勝手に名簿いじって自分の遅刻回数ごまかしてることバラすからな」



「えぇっ何で知って…!?…………お、お友達?からで…」




まぁ、遅刻のことをバラされるのも嫌なんだけど、
無表情ながらも必死な日吉君を嫌いではないかな、と思ったからあたしはそう返事した。



それでも日吉君は満足だったのだろうか、背を向けて教室の中に入ろうとした。



あたしはそんな彼に楽しい発見をして、




「日吉君、耳が赤いですよー?笑」



ってニヤニヤしながらささやくと、振り返った日吉君に瞬間的にキスされた。










あれー?友達同士ってキスとかするっけー?


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もちろん教室の入り口あたりで、です。