あとべ君がきらい。いっつもあたしにだけ意地悪ばっかりしてくるからきらい。あたしのイヤなことばっかり言うからきらい。
他の子となかよくすると「お前がはなしていいのは俺だけなんだよ」って言うあとべ君が大きらい。
初恋
同じクラスのあとべけいご君は運動ができて(中でもテニスがすごく上手らしい)あたしと同じ8才のくせにすっごくえらそうで、女の子たちにキャーキャー言われている男の子だ。でもあたしはあとべ君がきらい。学校はお友達がたくさんいてたのしいけど、あとべ君がいるからちょっとゆううつだ。あと、外国の言葉をはなせるからっていつも得意そうだ。でも、あたしはあとべ君が算数とか国語はぜんぜんできないのを知ってる。
「おい、コレいいだろ」
夏休みがあけて、3日め。学校にいくと昨日まで休んでたあとべ君が来ていていやな気持ちになった。
あとべ君はみんなにかこまれている。あたしが自分の席につくとすぐにやってきた。手には四角い箱をもっている。
「夏のあいだにドイツのおばぁちゃまの所に行ってきたんだ。だから学校をやすんでたんだぞ」
あたしがきいてもいないのに、あとべ君は勝手にしゃべってる。
「俺が学校をやすんで俺様の“いだいさ”がわかっただろ?」
あとべ君はまた意味もわかってない言葉をつかってるんだろう。(だって発音が変だったもん)
「もっと休んでくれれば良かったのに…」
「なんだと?」
あたしは小さい声でつぶやいたつもりだったのに、あとべ君は“じごくみみ”なのでその言葉をききとって不機嫌そうな顔になった。
そして持っていた箱をあたしの前につきだして、言った。
「このチョコレート、もうお前にはあげないからな」
あとべ君の持っている箱をよくみると外国の文字がかいてあって、チョコレートの絵もかかれていた。
きっとドイツでかってきたんだろう。
あとべ君は得意そうにふんぞりかえっている。
「いいよ、別に。外国のチョコレートは変なにおいがするからきらいだもん」
そんなあとべ君に、すこし怖かったけどあたしは口をとんがらせていった。
あとべ君は、いっしゅんテストですごく悪い点をとったみたいな顔になった。
「すっごくうまいんだからな!あとでほしいっていっても食わせないぞ!?いいのか?」
それで、すごくあせって早口で言ってきた。(うわぁ、つばがとんでるよ。やめてよ)
「いらないよ、お母さんの作ってくれるおかしの方がおいしいもん」
「ばーか!これは高いんだぞ!」
「そんなの関係ないもん!いらないったらいらない!」
「〜〜〜〜〜っ!!」
「わぁ、ヤメテよ!!」
あたしもムキになって言い返すと、あとべ君はあたしの髪をグシャグシャにしてきた。
せっかくお母さんにとかしてもらったのに!
さいあくだ。あとべ君はさいあくだ。
あたしは両手で頭をおさえてしゃがみこんだ。あとべ君は髪の毛をひっぱってくる。
すごくいたくて涙がでた。
「あとべ、もうやめろよ」
ししど君とむかひ君があとべ君のうでをつかんで助けてくれなかったら、あたしの頭はきっとはげになってただろう。
あとべ君なんか大きらいだ。
髪の毛は女の子たちがといてくれて元にもどったけど、あとべ君がチラチラこっちを見てたのには絶対ゆるしてやらないんだって、プイってそっぽをむいた。
学校から家にかえってポストをみると小さいかわいいお人形がはいっていた。
おかあさんは「にでしょう?」って言って笑ってた。
お父さんが「これはドイツの会社のやつだなぁ」って言ってて、あとべ君かなって思ったけどあとべ君は学校がおわると毎日、テニスのレッスンに行ってるらしいからきっとちがうな。だいたいあとべ君はあたしのことがきらいだから、そんなことしない。
あたしは小さいお人形を机の上において、誰がくれたんだろうかって色々そうぞうした。
やさしくてかっこいいおうじさまみたいな男の子だったらいいなぁ!
---------------------------------2005.10.29
素直じゃない跡部を書こうと思ったら、何故か小学生に…!人形をポストにいれたのはもちろん跡部です。ちゃんが帰る前にダッシュで入れに行きました。練習には遅刻しました。この2人、高校生になってからとかもかきたいなぁ…。
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