どうして女はそう陰険なんだと君は言うけどね、それはあたしがどうして男はそう自慢が好きなのかと思うのと同じなんだよ宍戸君。 悩み多き青春 あたしは胸のイライラを吐き出すように友達に宍戸の愚痴をたーんと言って、近くにいた宍戸のことを片思いしてる子を少し睨んだ。 きっと聞き耳をたてていたんだろう。そんであたしと宍戸が早く別れれば良いとか思ってるんだろ! もっとも、その子はこのイライラの原因にはなんの関係もなくてただの八つ当たりなんだけど。 あたしは今、10代のくそエロガキを彼氏に持つ乙女特有の悩みを持っている。 奴らは自分の経験を事細かに友人たちに自慢するんだ。宍戸だって例外じゃない。 おかげであたしの性感帯はテニス部の奴ら他、宍戸の友人たちにはつつぬけだ。 跡部は「お前、耳が弱いんだろ?」とかセクハラ発言してニヤリと笑ってたし、岳人なんかみんなの前で「って意外と激しいんだろ!?」って大声で叫びやがった。(激しいのはお前の髪型だ) 宍戸にやめろと言ってみても、 「言わないとしつこいんだよ、言うのが決まりみたいになってんだから仕方ないだろ。他の奴らも言ってんだからよ」 となんとも理不尽な理由を言われた。 (跡部とか忍足の彼女は派手なオネギャルじゃねーかよ!)(あいつらは暴露される間でもなく男どもと直接ヤってんじゃん) 「じゃぁもう一生話かけないでよ!」 とりあえず、そう言ってあいつの向こう脛を思いっきり蹴飛ばしてきたんだけど、 あたしの怒りは全然収まらなくて、それを散々きかされた友達は笑顔で「まぁまぁ」とあたしをなだめた。 (いい子だなぁ・・・) 放課後に宍戸が教室にきたけど、無視して帰った。 着信も何件かあったけど携帯の電源を切って枕の下に押し込んだ。 当分は口を聞いてやんないつもりだけど、やっぱりこういうのされると少し嬉しい。 枕に顔を埋めながら乙女モードに浸っているとお母さんが「ー!宍戸君がきてくれてるわよー」って叫ぶ声が聞こえた。。 「会いたくない!帰ってもらって!」 あたしはそう大声をあげてそう返したけど、お母さんのことだから「またあんなこと言って、気にしないで上がって」とか言って家にあげるかもしんない。 そんなことを心配してると、予想通り部屋のドアが開いて宍戸が入ってきた。 「ちょっと!勝手に入ってこないでよ」 「うるせぇよ、俺のこと無視しやがって」 そう言って宍戸は学習机から椅子をとりだすとドカッと座った。 「怒ってるんだからね」 あたしは宍戸から目をそらしてつぶやくと、また枕に顔を半分だけ埋めた。 どうやら、さっきの乙女モードはまだ続いてるらしい。 「…悪かったって」 宍戸は謝ったけど、こいつは彼女が一番ってタイプでもないし、 テニス部の奴らといる時はそれはそれは楽しそうだし、また同じ事が起こるんだろう。 あたしが答えないでいると、宍戸は「なぁー機嫌なおせよー」と言った。 宍戸は可愛い。格好いいけど、少しいじられキャラだし、何か憎めない。 「でも、もうヤんないから」 あたしはクルリと宍戸の方を向いて、そう言った。 宍戸はどう反応するのかと思ってたら、意外にもあっさり「別にいい」と言った。 続けて 「・・・俺は、お前と一緒にいるだけで十分だし」 そういって少し頬が紅くなった。 ・・・ちょっと、マジで可愛いんだけど・・・。 「我慢できんの?」 「お、おう」 すこし焦って胸をはる宍戸はダサかったけど、どうやらあたしの乙女モードは全開になっていてダサイ姿も可愛いと思えた。 重傷かもしれない。やっぱりあたしは宍戸が好きだ。 イヤだイヤだと言っていても、それは素直に好きと言えないだけで本当はウザかろうがエロかろうが好きなもんは好きだと思った。 うん、まぁ まだ少し憎たらしいのでそんなことは本人には言わないけど。 「ケーキで許したげる」 あたしはそう言って立ち上がって、マフラーを巻いた。 宍戸は「えーマジかよ」とか言いながら、渋々立ち上がってポケットから財布を出して中を確認した。 あたしは笑いながら宍戸の背中をポンポンとたたいて促した。 「一緒にいれるだけで幸せ、幸せ」 ---------------------------2005.12.10 |