「!俺と付き合ってくれ!」 顔を赤らめ、覚悟をきめた表情で言った彼は隣のクラスのスポーツマンで、甲子園の汗と涙をあつめたようなさわやかな男の子だ。学年でもそこそこ男前の彼の愛の告白をうけて、嬉しくない女子なんかいるのだろうか。 あたしも嬉しい。できることなら付き合ってしまいたい。 「あー、えっとー嬉しいけどー」 「やっぱり、鳳と付き合ってるのか・・・?」 あたしが全部言ってしまう前に、彼は心配そうに聞いた。 そうだ、あたしが彼の嬉しい申し出をためらってしまうのには理由がある。付き合ってない(事実上は)のに、ちらつくのだ。鳳の笑顔が。 待って、これは今更、鳳の大切さに気付いたとか、そんなノリじゃないから。断じて。 「あの、もし付き合ってないなら!俺とっ!」 必死に言ってる彼は可愛い。なんていうか、高校生らしさとか、あたしを想ってくれてる気持ちが伝わってくるよね。誠実そうだし。もう文句なしだよ。 でも、頭から離れないの!呼び出されて、教室をでる時に見てしまった鳳の笑顔が! いや、もうあれは笑顔じゃなかった。確かに顔は笑ってたけど、首に青筋がたってた。あと、そばにいた日吉君がそんな鳳を見てちょっとビクッてなってたもん。あの怖いもの好きな日吉くんが。 さっきの光景を思い出して渋るあたしを見て、さわやか君は何を勘違いしたのか、 「そうか、やっぱり鳳がいいのか。テニスも上手いし、何より優しそうだしな」 とくやしそうに言った。 ううん。あたしがここでウッカリ「おっけー」とか言ってしまったら、一番やばいのは君ですよ? そんなことを心の中で(口にだしたらどう広がるかわかんないしね★)思ってたら彼は「そうか、鳳と幸せにな」と言って、良い笑顔で足早に立ち去ってしまった。 昼休みの教室に戻ったら、無理矢理あたしの向かいに席をこしらえた鳳が 「あいつ、のこと前からチラチラ見ててどうにかしてやろうと思ってたんだ。」 と笑顔で言っていました。 (こいつがいる限り、あたしに幸せはこないと思う) ------------------------06.09.22 10.03.07一部修正。前タイトル→「それができないのは。」 |