音をたてて、立ち上がった。




「あーわかんないわかんない」


頭をふりながらあたしはもうウンザリって気持ちを前に押し出すように言った。




「でも、これやらなきゃなんねぇんだろ?」



宍戸ったらなんともまともな意見を言う。
あたしの机の上にのったプリントから目を離さずに。



あたしがテストでなんとも言えない点数をたたき出したので、先生がドカーンと怒ってこのプリントを課題として授けられたわけだ。



で、彼氏の宍戸は必然的にあたしに勉強を教えなければいけなくなった。
(だってあんまり勉強しないであたしが退学にでもなったら、泣くのは宍戸だからね)



あたしは教室の窓をあけて、そよそよと吹き込む風に目を細めた。

宍戸はそんなあたしに怒りもせずに黙々とプリントにむかってるんだろう。



(そういえば、今日宍戸の誕生日なんだよなー)

誕生日なのにあたしのプリントを手伝わせてしまってごめんよ。とか考えながらもあたしは席に戻る気なんてサラサラない。



校庭で活動する運動部を目でおいながら、うとうととしていたら席を立つ音がした。




「俺、部活行くから」

振り向くと、テニスバックを肩に掛けながら宍戸が目もあわさずに言った。

あたしが黙っていても文句ひとつ言わずに、ガラリと扉をあけて宍戸は教室を出て行ってしまった。




「見捨てられた・・・」

自分勝手に行動するあたしと、しっかり自分のペースで行動する宍戸。
大丈夫なのかな、あたし達。

少し不安になった気持ちを抑えながら、自分の席に戻ってプリントを見ると、丁寧な問題の解き方と最後に「頑張れよ」という言葉が宍戸のがさつな文字で書かれていた。




あたしは勢いよく席に座ると、「よしっ」と気合いを入れてシャーペンを握った。
早くこの問題をやっつけて、バカみたいにラケット降ってる宍戸に飛びつきに行かなきゃ。

それで、顔を真っ赤にした宍戸にありがとうとおめでとうと大好きを言ってやるんだ。














君に告げよう、愛の言葉を



-------------------06.09.28
奔放な女の子にあまり振り回されない宍戸くん。
でも優しさは果てしなくあります。