跡部があたしの隣にすわる。 















              どきん













                     心臓が大きく鳴った。































中庭にはさわやかに風が通って、お昼をすごすにはぴったりだ。
けれどうちの学校には立派な学食があるので、あんまり人はいない。
ここをお気に入りの場所として、ベンチを陣取るあたしの隣に今日はなぜだか跡部が座った。

チラリと横目で跡部を見る。






「学食にいかないの?」

「今日はお前と食べることにした」

「(は、なんで?)」


あたしの素朴な疑問に跡部は当然といったように答える。不思議に思いながら、跡部を見上げていると、少しだけ口の端をあげた笑顔をしていた。







「もうちょっとこっちこいよ」



そして唐突に、跡部があたしの腰をだきよせた。



「え、ちょっと」


あたしは焦って身体をよじらせたけど、跡部はその手を離してくれない。



「あばれるな」

冷静に言う跡部。
いやでも、この腰にまわった腕はおかしい。どうかんがえてもおかしい。




「手、離してよ」

「嫌だ」


あたしがドキドキとなる胸を隠すようにぶっきらぼうに言っても、跡部は不遜な笑顔で否定の言葉を述べる。
あ、やばい。ちょっと格好良い・・・。





(いや、待て自分。)


「誰にでも、こういうことすんの?」

「はぁ!?」


あたしがすこしためらいながら聞いた言葉に、跡部はものすごく顔をゆがめてちょっと素っ頓狂な声をあげた。(その声にあたしはびっくりした)

そして、機嫌の悪い表情をしながら拗ねたような口調で言った。




「付き合ってんだから、お前にしかしねぇよ」


「・・・え、は?付き合ってんの?」



口をぱくぱくさせて言った一言がまた跡部は気に入らなかったらしい。
あたしの腕をつかんで、ぐっと顔を近づけた。


「だ、だって付き合うとかそんなの一言も」


「お前、俺のこと好きだろ?それで良いじゃねぇか」


動揺したあたしの言葉に「俺様のなにが不満なんだよ」とでも言うように意地悪な笑顔ですっぱりと吐き捨てられた跡部の言葉。
はっきりと自分の気持ちを見透かされて、跡部の綺麗な顔が近くにあるってこともあってだんだん顔が赤くなってくのがわかる。肘のすぐ上のしっかり捕まれている部分がすこしだけ痛くて、そこからどんどんとドキドキが広がっていく。




「いや、だって跡部、あたしの事なんとも」


「好きだぜ、。俺と付き合うだろ?」



跡部はやっぱり口の端を持ち上げたまま、言った。

-----------------------------06.10.04