キャーキャ−と叫ぶ女子達。フェンスごしにみたらまるで動物園の猿みたい。
まぁ、そういうあたしはフェンスの中にいるからこっちが猿なのかもしれない。







暑いのにご苦労さまだ。
あたしは陰に設置されているベンチの上で体育座りをして日よけのタオルを頭からかぶりながら思った。


どうしてマネージャーでもないあたしが天下の氷帝のコートのなかにいるかって?
そんなの簡単だ。跡部景吾の彼女だから。




あたしが笑顔で「景吾の試合が見たいな」って言ったらこんな所で特別待遇。


きっとあたしのことを「なにあの女」なんてみてる連中はたくさんいるだろうけど、そんなの知らない。
あんた達はその場所で黙って見てれば良いよ。








「あーしんどー」

レシーブ練習が一通り終わったのか、コートからでてきた忍足がどかっと隣に座った。
そしてあたしの顔を見て言う。





「なんや、怖い顔で見てんなー。」


その言葉には「跡部やなくて外野を」という意味が含まれていて、すこし腹が立った。






「だって、うるさいんだもん。」


ふくれっつらで言ったら、忍足は「しゃーない」と言った。


何がしゃーない。だ。



あたしは部員に指示をだす跡部を睨む。


今すぐここでパンツでも降ろしてひょっとこみたいな顔してコサックダンスでもしてみろよ。
そうしたら、きゃーきゃーうるさい声も無くなるでしょ。






跡部はあたしの気持ちなんか知らないように、真剣な顔で部員と話してる。




(まぁ別にテニスをおろそかにしろって言ってるわけじゃぁないんだけどさ)




正直、テニスをしてる跡部はむちゃくちゃ格好良い。



(あ、やばい。いまちょっと乙女モード)






そんなことを思っていると、跡部がこっちを向いた。


目があったのに、ニコリとも笑ってくれない跡部に不満を覚えていると、跡部は無表情のまま早足であたしの元によってきた。







「なぁに、景吾?ちゅうでもしたくなった?」



って言ったら、跡部は「バカか」と一言、あたしのタオルをとって三角にたたんだあたしの膝から足首にかけた。





「ちょっと、日焼けする!」



あたしが怒ってタオルをまた自分の頭にかけると、跡部はチッと舌打ちをして自分の着ていたジャージを脱いであたしの膝にかけた。






「お前、下着が見えそうなんだよ」


跡部の声と、かさなる甲高い外野の声。



すぐに後ろをむいてコートに戻ってしまう跡部と、その格好の良さに顔が赤くなるあたし。


とどめに忍足の言葉。



「あぁ、だからさっきからミス多かってんな。」












あんた達、


黙ってそこで見てればいいよ


-------------------06.10.07
あたしと跡部の愛をさ、