跡部景吾といえば、お金持ち学校の氷帝に通っている、テニスが馬鹿上手い超男前だ。




そんな跡部に惚れて惚れられたあたしはシンデレラと言っても過言ではないと思う。


(こんな顔しててもだ!)





平成シンデレラガール










でもね、跡部は容姿と金と運動神経だけじゃないんだよ。

なんかさ、妥協を許さないテニスへの姿勢とか信念とか土台がしっかりしていて、ほんとにあたしと同い年かよ。っていつも思う。






「おい、、高校は氷帝に来いよ」


「えー、やだ。氷帝あたま良いもん」


「ちょっとは頑張れよ」



中三の時すでに、跡部はあたしにあきれた顔をしてこの言葉を言ってきた。


高校になっても跡部はテニスをバリバリやってて、

ふらふらしてるだけのあたしには自分の彼氏ながらに眩しかった。







(たとえば、試合の時に一生懸命応援するマネージャーの子とかさ)





頑張れる跡部と、頑張ることに意義を見つけられないあたし。



跡部の家に行くと、跡部のお父さんとお母さんはちょっと微妙な感じだし。



あたしは何につけても跡部に頑張ってとしか言えないし。
(かと言ってあたしは他に頑張ることも見つけらんないし)









「俺んとこに嫁にこいよ」


ある日、跡部が何気なく言った。まぁこの手の話は跡部がよくしたがるものなんだけど。

あたしは手に持ってたお菓子から目を離さずに聞いた。




「・・・跡部はこれからどうすんの?」


「テニスと親の会社、だな」


「やだ、あたしついていけない」


「あ?なに言ってんだよ」



跡部が少し予想はずれの声をだしたのであたしはちょっと首を傾けて、隣にいる跡部を見た。





「普通のサラリーマンと結婚するよ」



跡部はあきれたような顔をした。



(でもそれはいつもより悲しそうな顔で)


(それはあたしにしかわからない変化なんだ)












「ちょっとは頑張れよ」


いつもの跡部の言葉が頭の中にこだまする。



でも今の跡部はあたしにそんなことを言わずに少しあきらめたような、不安な、そんな顔をしている。


お金を持ってたって、頭が良くたって、跡部は今そんな顔をしている。










「うそだよ、あたし跡部と結婚する」


だからあたしはすこしモヤモヤする胸を誤魔化すように悲しそうな跡部の顔にキスをする。


--------------------2006.12.01
跡部君との価値観の違いに悩む努力しない女の子。