!」







おおきな声がして、教室の奥から日吉君が大股でこっちにやってきた。それまで昨日のテレビの話をしてたあたしと長太郎はいつもとはあきらかに違う日吉君の様子に目をぱちくりとさせた。日吉君は途中で床に置いてる誰かの鞄に足をひっかけたりしながら、やっとあたし達のところまでたどりついた。こんなに短い距離なのに、少し顔が赤くなって肩で息をしてる。(大丈夫か、テニス部なのに)







「お、お前ら、テニスの話なら俺もいれろ!」


「ちがうよ、あいのりの話だよ?」


「あい・・・?」


「あいのりだよ。日吉、見ないだろ?」






口をひらいた長太郎に「うるせぇ黙ってろ」と一言。日吉君のなんとも言えない不機嫌な態度にあたし達は顔を見合わせた。
そして日吉君は長太郎の方に向き直ってもともと悪い目つきをもっと悪くした。







「鳳、お前ちがうクラスだろ。教室戻れよ」


「・・・は?」


「もうすぐチャイムなるだろ」


「いや、あと20分はあるし、と話の途中だったし」


は今から俺が話すんだ」


「なんだよ、もう」






長太郎は日吉君の意味不明で勝手な態度に少し怒りながら、自分の教室に戻ってしまった。(あいのりのゆくえは・・・)日吉君はというと一仕事終えたように、大きく息を吐いた。





「・・・」


「・・・」


「・・・で?何」


「・・・は?」


「は、じゃないよ」






ぽかんとした表情をうかべる日吉君はめずらしいけど、あたしは人の間に割って入ってまでしなきゃいけない話の方が気になる。


なのに、日吉君はしばらくの沈黙の後、「良い天気だな」と一言。







「は?そんなことどうでも良いよ!長太郎を帰しまでしたくせに!」




あたしは怒りを表してつめよると、戸惑ったような顔をして日吉君は唸った。





でも本当は知ってるんだ。どうしてあたしと長太郎の話に割り込んでくるのか、いつもは無愛想な日吉君のこの顔でわかる。







君は気付いてないみたいだけどね。


ねぇ 日吉君、






知ってる?それはね?








だから、どうしてあたしがわざわざ君のいる教室で他の男の子と話すのか、早く気付いてくれないかなぁ。07.01.14