「あー、さっぶぅー」






がマフラーに首をすぼませて、白い息をはく。すりあわせる手の指に光る指輪は俺がやったもんだ。しかめっ面をしてるとはいえ、さも「寒いんです」というようなその仕草は可愛い。(まぁ口にはださねぇけど)





「何ふてくされてんだよ」



「はー?べつにふてくされてないしー」



「俺だって朝早かったんだよ」



「はいはい、そうですねー」







多分、こいつは今朝おれが迎えに行かなったことに腹をたてているんだろう。
何も毎日一緒に登校してるわけじゃねぇし、部活の朝練はいつも通りに行われ、俺様はいつも通りに一人で学校に来た。



そのいつも通りが どうやらの機嫌をそこねたようだ。


今日はバレンタインデーだった。














sweetish honey











いつもはあっさりしたがバレンタインデーごときでここまでふくれるとは思ってなかったが、まぁこいつの事だから「迎えにきて当然だ」と思って待ってたんだろうな。


朝練が終わったコートの横にたたずむの顔はすでにふてくされていた。





で、その状態はが俺の数歩先を急ぎ足で、それを俺が追いかけて歩くという現在の状況にいたるわけだが。
用意してんならさっさとだせよな。 そう思いつつも前のの背中を見つめながら少し頬がゆるむ。




(この調子なら、期待しても良いだろ。手作りだな。)




どうすればチョコをもらえるだろうかと、柄にもなく首をひねって、このまま放っておいても機嫌がなおりそうにねぇなとに声をかけた。








「可愛くねー」



「そうだよね、そのうち跡部君は可愛いお嬢さんをお嫁にもらうんだもんねー、あたしなんかポイッ!でしょ、もーわかってるもん」



「・・・」



「ちょっと!そこはほんとに否定してよ!」













「おい、」







その時すでに、俺たちは校舎の中に入り、授業前の生徒がにぎわう廊下にいたわけだが、



「いいからだせよ、チョコならずともお前ごともらってやるからよ」



ぐっと顔を近づけて言ってやると、


は一瞬、口を開けて固まった後、小さく「ばかじゃない」と吐き捨てやがった。






------------07.02.28
おいおいバレンタインすぎてるよ!