「あたしは日吉のこと好きだっつってんじゃん」






それ以上に何があんのよ。と、さんはふてくされたように俺に言った。


さんのことを好きな俺としては嬉しくなくはない言葉だが、この人は好きという言葉に感情をこめない。今だって放り出すように言われた。
きっと本音をむき出したような話が嫌いなんだろう。






「なんですか、それ。俺ら付き合ってんですよ」


「だぁーかぁーらぁー 好きだから付き合ってんじゃない!」





さんはさらに顔をしかめる。さっきから俺の顔を見ようともしないあたり本気で嫌なんだろう。ベンチに体育座りをしたまま、自分の靴の先を見ている。






「もう良いよ、この話は」


「(良くない)」







俺がさっき「本当に俺のこと好きなんですか?」と自分らしくない直球を投げて、さんが俺の期待する答えをだすのに、散々ごねてこの状態に至るまで結構な時間が経った。




俺も何がしたいのかそろそろ解らなくなってきた。





多分、さんが俺のことを好きでいてくれてるのは堅い。
さんが俺より一つ上の学年で 年下の俺としてはやっぱり多少の不安はつきまとう。さんが年がどうこうという人でないことも、やすやすと好きだとか表す人でもないことは充分知っているけれど、たまにはこの人の口から事実を確かめたい。とか思っても当然だと思う。


(鳳のやつが「気になるんだったら、先輩と気の済むまでじっくり話した方が良いって!絶対!」と無理矢理、背中をおしてきたからではない。決して。)







「じゃあ、なんで学校で俺のこと微妙に避けるんですか」


「気のせいだよ」


「俺が年下だからですか」


「・・・」




確信にせまった言葉に、さんは膝を抱えたまましばらく黙りこんでしまった。
それから今まで下に落としていた視線を俺の方にうつして、ぽつりと言った。




「日吉が、いくつだとかは、どうでもいい。」


「・・・」


「でも学校とかで日吉と一緒の学年の、特に女の子達見た時とか、なんか嫌だ」


「なんかされてんすか?」


「別に何もされてないけど、あたしが嫌だ。・・・意識する。そんで、年とか気にしてないつもりなのに意識してる自分が嫌だ。」






しどろもどろになったさんを見て、この人は自分の素直な気持ちを話すのが嫌いというよりも、苦手なんだろうな。と、つくづく思った。

さんがこんな人で良かった。もう少し素直であったら今頃は宍戸さんあたりに持ってかれてたかもしれない。可愛い人だと思う。







「日吉だってさぁ、あたしにさぁ、まだ敬語使ってるし、さんて呼ぶじゃーん!」







照れを隠すようにに叫んださんはきっと、誰よりも俺のことが好きだ。




「じゃあ、



「やだぁ日吉ー、やめてよ。かゆい。」




             かわいいひと


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(あいかわらず嫌悪感たっぷりな顔をされた)

07.06.30