世の中はそんなにうまくまわってないのだよ、


私は今ちょうど読み終わった少女漫画をぱたんと閉じると心の中でそう思った。

ちょっと自分に浸りながら 窓のそとを見ると、下のベンチで跡部君とその彼女のさんがベンチでおしゃべりしてた。私どうしてこの席なんだ。






        レアリスム


















「けーご!かぁーえろー!」



授業が終わって放課後になると、さんが廊下から顔をだした。



「あー?今日は監督に呼ばれてるっつったろうが?」


「ええーなんで!今日練習ない日じゃん!」


「知らねぇよ」


「ただでさえ一緒に帰れないのに!」




跡部くんは忙しいんだから、ちょっとは気遣ってあげればいいのに。


周りの女子の間にそんな空気が流れた。
もちろん私だって、「私ならもっと理解してあげれる」って心の中でちょっと思った。





「とりあえず、監督んとこ行ってくるから」


「あたしもいくー」


「バカか?待ってろ」


「ダッシュー!5分しか待たないから」



さんがふくれっ面で跡部の席の椅子を引きながら、教室をでていく跡部にむかってさけんだ。




すごいなぁと思って さんを見ていると、しばらくは拗ねたように足をぱたぱた動かしているだけだったけど、そのうち跡部の机の中を引っかき回して、ノートを取り出すと何か落書きし始めた。




(やめてあげてよ、跡部のノートはすっごくキレイにまとめられてんだから)



心の中で思う。どうして跡部はこんな子と付き合ってるんだろうなぁ、とぼんやりと思った。多分、跡部のことを好きな女子全員が抱いている疑問だろう。

きっと彼女にも良いとこがあって、跡部と相性が良いんだろうけど、よく知らないので私にはわからない。宍戸とかに聞いたらわかるのだろうか。










「跡部くんもたいへーん!」


クラスのはっきりした女の子(この子も跡部のこと好きなんだろう)がその一言を言った時、教室の雰囲気が凍った。


(でも色んな人間を代表している・・・)





「テニスも生徒会も大変なのに、わがままと付き合って!」




その一言に、さんはノートから顔をあげた。




「ん?あんた関係ないじゃん」


「私には関係ないけど、跡部君はめんどうくさいんだろうなーって」


「ふうん。じゃ、あんたが景吾と付き合えば?あ、無理か」



迅速に、かつ要領よくさんは事を済ませた。

二の句が告げなくなった女子に周りの同情の目が注がれる。




無邪気で、強かだ。



「あたしは景吾ともっと一緒にいたいんだ。」


跡部の彼女という立場にいるさんが言ったその一言はとってもリアルだった。私は跡部と付き合ったと仮定して、会いたいのを我慢して笑顔で彼を応援する姿しか想像できない。さんはリアルだ。私の陳腐な妄想話より、痛々しい。でも、すごくうらやましい。


跡部に話しかけるときだけの少し舌足らずな喋り方も、


以前、「いいなぁ 景吾と同じクラス」と私に言った笑顔も、



全部、現実に跡部に大事にされている証拠で



全部、妬ましい。






跡部がどれだけテニスを好きで、色々なことを頑張ってるかだなんて、少なくとも私たちよりは彼女の方がうんと知ってるんだろうなぁ。跡部はあんな性格だから、実際だまってちゃ気持ちは伝えらんないだろうなぁ、と。
跡部のことを好きなくせ私は少しさんに同情してしまった。



さんは女子を睨んでいたけど、泣き出しそうにも見えた。(近くにいないからわかんないけど)


そこに帰ってきた跡部は何かを感じ取ったようだけど、何も聞かずに「おい、帰るぞ」とさんに声をかけた。



さんは跡部とまだ少し固まっちゃってる女子を見比べて、やっぱりふくれ面になった。



「テニスも生徒会も、景吾の都合じゃん。」



跡部は大きなバックを肩にかけて、何も言わずにさんの頭をなでた。






さんはテニスが強いとか、頭が良いとか、ましてや経済力だとか、そういう部分を全部とりのぞいて、跡部を見てるんじゃないだろうか。


それは少女漫画の好きな私が憧れの跡部君とその彼女のさんを美化したいだけかもしないけれど




-----------------07.07.25
いろいろ説明したい気もするけれど。