グズグズすんなよ。









そう言って跡部くんはあたしの鞄を持ってスタスタと長い足で歩き始めた。








「あ、待ってよ。」




あたしはあわてて手に持って見てた商品を棚に戻して、お店の外にでてしまった跡部くんの後を追う。






跡部くんに追いついて「鞄、ありがとう」って言って自分で持てるよ、てしるしに腕を出してみたけど 跡部くんはあたしの鞄を返してくれなかった。あたしの鞄は一目見て、女物ってわかるから、跡部くんには持たせたくないのに。バカップルみたいに見えちゃうよ。でもこの前そう言ったらすごくムッとしたので 今日は恥ずかしいけど何も言わないでおこう。



それにしても不機嫌だかなんだかしらないけど、なんでこんなに歩くの速いんだろう。不機嫌になるとすぐ態度にでるからなー、まぁあたしといる時は9割不機嫌なんだけさー。この人なんであたしに告白(といっても”付き合え”って吐き捨てただけだけど)してきたんだろう。










「跡部くんは歩くの速いねー」







あたしの言葉に無言で跡部くんの大きくて骨張った手があたしの手首をつかんでひっぱる。


引っ張るんじゃなくて、歩幅を合わせて欲しいのに、
これじゃぁバカップルどころじゃなくて、連行されてる万引き犯とGメンに見えるよ。




跡部くんとつきあうことになった時は価値観が違いすぎて、どうしようかと思ったけど、いまだに跡部くんとどう接していいのかわかんない。跡部くんにはあたしのそんな一歩ひいてる感じがイライラするらしい。














あれ?なんであたし跡部くんに好かれてんの?






不思議に思って横を歩いてる跡部くんを見ても、不機嫌そうに前を向いたまんまあたしの方なんかチラリとも見てくんない。
そう考えだしたらどんどん不安になってきて、思わず口に出さずにはいられなくなった。










「ねぇ、なんで跡部くんはあたしを好きじゃないのにあたしと付き合ってるの?」



(あ、聞き方まちがえちゃった)







バッと本当に音が出たんじゃないかと思うくらいの早さで振り向いた跡部くんのきれいな顔はひん曲がっていた。
「ハァァァァ?」とそんな間抜けな声をだす人ではないけど、確実に表情がそう言ってる。









「好きじゃなかったら 手なんか繋いでねぇよ」





あ、これ繋いでたんですか。



仏頂面の跡部くんにポロッと呟くと、「ちゃんと繋がねぇのはお前だろ」と怒鳴られた。





-----------------07.08.11
跡部→不器用せっかち。彼女→バカ。