「仁くん、あのさぁ見に行きたい映画があるんですけど」


と、あたしは近所の映画館のパンフレットを指しながら煙草を吸っている仁くんのスウェットの端を引っ張った。「ああ?」と仁くんはあたしの指先を見てから、「興味ねぇ」と一言。冷たい言葉とともに煙草の煙をはき出した。









やっぱりね。



予想通りの答えにあたしは肩を落とす。
仁くんにラブロマンスな映画はやっぱりダメか。パンフレットをのぞき込みながら、チラリと仁くんを見るけど、だらりとベッドにもたれかかってテレビの画面を見たままあたしの方を見る様子もない。しかたないなぁ、ともう一度肩をおとした。







「うーん、恥ずかしいけどやっぱり一人で見に行こう」







あたしがそう呟くと、仁くんは灰皿に煙草を押しつけ、そばにあったリモコンを手にとってテレビの電源をおとした。そして、ゆっくりと立ち上がって あたしの方を向いて言った。





「行かねぇとは言ってねーだろ?」




ほら、立てよ。といわんばかりにあたしに向かって手を差し出す。




「その格好で行くの?」




手を掴んで立ち上がったあたしが不満そうに言うと、仁くんは乱暴にクローゼットを開けるとジーンズを取り出した。あたしはそんな仁くんの背中に、どうしようもなく頬が緩んでしまうのだ。














愛の眼で




( あ い の ま な こ で  )
-------------------------07.09.18
でも仁くんとラブロマンスを見に行ってもわりと浮いちゃう。