やって
 
 
 










跡部様が 彼女と別れたらしい。いつだってニュースは一気に学校中をかけまわる。


今回は半年いかないくらい。跡部にしては長い方だ。








「よぉ」





ペンを指先でくるくると持て遊んでいると、練習を終えた跡部がガチャリとドアをあけて部室に入ってきた。いつもどおりだ。日頃の跡部とおんなじで、定期的にくる女の子と別れた時とおんなじ様子。跡部が彼女と別れて落ち込んでいる所をテニス部のマネージャーをする前からの長い付き合いのあたしは見たことがない。







「今回は一段と盛り上がってるね」


「ああ?」


「別れたって噂になってるよ」







あたしの言葉に跡部は無言でジャージを脱いで、それをなぜかあたしの頭の上に投げた。跡部のジャージで一瞬視界が遮られる。
文句を言う気にもなれずに練習メニューを書く手を止めて、ジャージを軽くたたんでから机の上に置いた。

携帯の画面のデジタル文字で時間を確かめる。
この後は彼氏と待ち合わせをしているから急がなければなぁと思いながらペンを走らせてたら、跡部の視線を感じて顔をあげた。







「なに?」








「飯でも奢ってやるぞ」


「ごめん、この後デートだわ」







跡部にご飯を奢ってもらうのはいつもよりちょっとだけ良いものが食べれるので(といってもスタバで遠慮せずに頼めるだけだけど)ちょっと残念に思いながら断る。





「せっかく俺様が言ってやってんのに」


「そんなだから長く続かないんだよ」






鼻を鳴らして笑いながら言った跡部にたしなめるように吐き捨てると、いつもの憎まれ口が返ってこなかった。不思議に思ってあたしが跡部を見上げると予想に反して跡部は神妙な顔つきで口を開いた。








「良いんだよ、どうせ最後はお前って決まってんだから」





どうせってなんだ。
あたしには現在進行形で彼氏がいるんですけど。
いつもの人をからかう時の意地悪な笑い顔はどうしたんだ。





たくさんの疑問に関わらず、他の女の子がこうやって跡部に恋をしていくのだなとかボンヤリと思いながら、あたしは自分の顔が熱くなるのを止められなかった。


-----------------------------------07.11.12
真顔で言うところが跡部くんは天然だと。