「うーん」 ホームルームの時間、先生から配られたプリント前に悩んでいたら、 あたしの顔を覗きこむように隣の席の赤也が突然、視界に現れた。 「わ、(びっくりした)」 「なに、まだ書いてないの?」 驚くあたしを横目に赤也はあたしの手元にあった紙を手にとった。 進路希望と無機質な文字と長方形の枠線がならんだそれはあたしのシャーペンによる文字は氏名以外には書き込まれてない状態だ。 「なに書いていいのか全然おもいつかない」 ため息をついて、赤也の机の上をみると、きちんと第三希望まで書き込まれていた。 「見んなよ」と手で隠されて、何が書かれてるかは見れなかったんだけど。 でもちゃんと将来が見えてるっていいな。あたし全然考えてなかったや。 「俺が書いてやるよ。」 そんな風に悩むあたしを見て、赤也はにんまりと何かを思いついた顔をして、勝手にあたしの筆箱からサインペンを取り出した。 そして、素早い動きで紙の上にペンを滑らせた。 第一希望 ”永久就職(切原くんのとこへ)” 「あ、ばか!」と思わず左手に持ってた消しゴムを赤也に投げつけると、ポコンと良い音をたてて赤也の頭にあたって教室の端までとんでった。 油性の黒がくっきりと紙に滲んでどうしようもないじゃないか! 手元の紙を見つめてため息をついて、椅子から腰をあげる。紙を片手に掴んで教卓にむかうことにする。 「あれ?、かきなおさねぇの?」 赤也のニヤニヤしたような顔が手に取るようにわかるので、少しイラッとしながら言う。 「仕方ないじゃん、消しゴムなくなっちゃったんだから」 そういってこのふざけた進路希望表を提出するべく教壇の方に歩いていくと、 「男前すぎるだろ…むしろ嫁にもらって欲しい」と呟くバカ赤也の声が耳にはいった。 恋は突然に ------------------------------------08.08.17 赤也をおよめに! |