※学園祭の王子様のあれは、浮気だという話です。
 忍足をひっぱたいた女の子が主人公で、忍足が大分と最低な感じに仕上がっています。







あたしが侑士の頬を思いっきりビンタしてから二週間。しばらく顔も見たくないと、会わなかったうちに、侑士に新しい彼女ができたみたいです。

(何それ!)






愛とはなんぞや








































そもそも別れるなんて言ってない。ということはこの際、置いておこう。

侑士が手を出したのは一つ下の後輩の女の子で、あの合同文化祭の実行委員をやっていた。しかもあたしのビンタシーンを見ていたらしい。それを心配した女の子に侑士が「全然知らん子やねん」とあたしをダシにして、愚痴を交えて同情をひきつつ持論を展開し、捕まえた。と今朝久しぶりに会った岳人を筆頭とするテニス部の連中からおもしろおかしく聞かされた。


それを聞いたあたしは、あまりの侑士のやりように、怒りは十二分に沸いたものの本人に怒鳴りに行く気はもはや起きず、「ほんと、あたし何であんな奴と付き合ってたんだろう。」と自己嫌悪へと感情をうつした。




ーいっしょに帰ろや」
「・・・」



そんなあたしの落ち込んだ気分もつかの間、チャイムが放課後を告げてすぐに一番みたくない顔があたしの名前を呼びながら教室に入ってきた。今日は水曜か、なんて頭の隅で思いながらも、答えないでいると「何やねん、無視かいな」とあきれたように言われた。何で侑士があきれるんだ。




「久しぶりにおうたのに、愛想ないなー」
「侑士のことをテニスの才能でしか見てないあたしに何か用ですか?」
「うっわ、それ誰から聞いたん?」
「跡部からも、岳人からも、みんなから聞かされましたけど?」




あいつらの面白くて仕方がないといって話していた顔を思い出して腹が立つ。
当の侑士は「なんやあいつら喋りやな」としれっとしている。






「それで、何?」
「いや、一緒に帰ろう思て」
「はぁ?2年の子と一緒に帰れば?」



”新しい彼女”と言うのは悔しかったのでやめておいた。こういう所が自分がまだ目の前の男のことを好きなんだなって自覚してしまう。
そんなあたしの気もしらずに、侑士は頭をかきながらあたしを見る。




「それがなーなんか真っ直ぐすぎてしんどいっていうか」
「あいかわらず最低ですね」
「いやーそんなんは言い訳かもしれんけど、」
「?」
「やっぱ俺、やないとあかんわ」






へラッと締まりのない顔をして笑うその顔に、その言葉があたしにとっても2年の女の子にとってもどれだけ失礼なのかとか、人間としてどれだけ最低なのかという冷静な気持ちは確かにあった。
あるのだけど、その根底で侑士の言葉にほだされかけている自分がいるのだ。

「ほんまごめん、怒ってる?」とこちらをうかがうその様子に、「かわいい」と思ってしまう感情は、この最低な男と付き合っていけるのはあたししかいないという奇妙な責任感に変わる。



そういうの、全部ひっくるめて愛と呼ぶのだろうか?












-------10.02.26
だめな忍足と流される女子