あたしの席の机を挟んで、目の前にはおっかない顔をした真田くん。(付き合っています)
あたしと真田くんの間の机には、”進路指導”と記入された白い紙が二枚のっている。真田くんの分と、あたしの分だ。







「で、将来のことだが」






真田くんが話の口火をきった。でもその突然の話題に意味がわからないあたしは「はぁ」と間抜けな声をだした。そしたら、たるんどる!と一喝されてしまった。


今朝のHRで、全クラスにこのプリントが配られた。生徒のほとんどは高等部に進学するんだろうし、先生達も形だけやっておこうってことだろう。けれど真田くんは思うところがあったのか、昼休みになるとすぐ「良い機会だからな。」とか言ってあたしの教室を訪ねてきた。あたしは真田くんにお小言言われるの嫌だからなるべく校内では会いたくないんだけどな。ってちょっと思ったことは内緒だ。








、お前はどう考えているのだ?」
「高等部に進学します。」
「そんなことは解っている。その後の話だ。」







「俺はお前とこういう関係になった以上、男としての責任をとるつもりでいる。」



え、とあたしが一瞬ひるんだのにも関わらず、真田くんの表情は変わらない。
そして、あたしの「???」の気持ちを読み取ってくれたのかどうだかは解らないけど、とても簡潔な言葉をくれた。









「要は、お前を嫁に貰うということだ。」






ええ、と真っ直ぐすぎる台詞に少しときめいた反面、あたしはそんなことあんまり考えてなかったなぁ。と考えを巡らせる。


あたしが超堅物の真田くんのお嫁さん?毎朝4時起きの真田くんの?ちょっと気を抜いたらすぐに大声で「たるんどる!」って怒鳴る真田くんの?テニスばっかりで、あたしのこと好きなのか好きじゃないのかよく解らない真田くんの?













「真田くんが、毎日愛してるって言ってくれるなら。」





あたしが真田くんとの将来に少しばかり不安を覚えた気持ちでそう呟くと、「西洋にかぶれおって!」とまた一喝されてしまった。



真田くんのことだから本気の本気で言っていて、きっと貫き通すつもりだなぁ。あたしが他の人と結婚するとか言っても、「お前、人生で二人の男となどふしだらだ!」とかいってお説教されそう。余計なことを考えながらも、目の前の真田くんをもう一度きちんと見つめる。





口うるさい真田くんの?真っ直ぐすぎてうざい真田くんの?頑固で融通の利かない真田くんの?あたしの大好きな真田くんの?






「やっぱり嘘。そんな気持ち悪い真田くん、見たくないからやめてね」



「気味が悪いとはなんだ!」









真田くんはあたしの言葉に、憤慨してダンと拳を響かせて机を叩いた。


ああ、そこじゃないのになぁ。
































































それから進路指導の記入欄に「先生、高等部に行って真田弦一郎と結婚します。」って書いたら、真田くんがあわてて「付属高校進学希望。」と書き直してくれた。
「お前の突飛な所は俺がおらんとどうしようもない。」なんて憂いていて、どうやら真田くんは、妙な責任感を背負いこんでくれたらしい。
あたしは自分のプリントに刻まれた気合いの十分入った文字を見て、また先生に真田に頼るなとかいって、怒られるのかなと思った。しかし筆圧が強すぎる真田君の字は濃すぎて消せない。


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漢・真田でお送りしました。