「ーまた千歳おらんでー」 金ちゃんのつまらなさそうな声に、またかという気持ちが過ぎる。 そして、おさむちゃんの「、探してきたってー」という声、 あー、またか。 千歳の行きそうな所ぐらい、だいたい見当がつく。 あたしは校舎の裏にある、自転車置き場に行って自分の自転車をさがす。でもそれはいっこうに見当たらんくて、その疑問は「あーまた千歳、勝手にあたしの自転車乗ってったな」という結論に変わる。最悪や。 しゃあないから謙也の派手な色した自転車に勝手にまたがって、道路にでた。 学校の前の大きめの道路をずーと走ってったらある、大きい公園の中をぐるっと見てみる。でもあたしの探してる背丈は見つからんくて、公園に沿って存在する商店街の方までペダルをこいだ。 「あ、」 あたしを見つけると、部屋の奥にいる千歳は笑顔で手を振ってきた。 あたしは将棋をうつおじさん達の間を「すみません」と謝りながらすりぬけて、へらへらと笑う男のもとへ向かう。 「なんでこんな観光客と酒飲みばっかのとここなあかんの」 千歳の勝負が終わるのを待たされて、ふくれるあたしに千歳は「まだブラブラしたか」と見当違いなことを言う。やっと将棋会館から連れ出せたと思ったのに、千歳の気はまだテニスには向いてくれないらしい。人がせっかくここまで来てるのに、信じられへん。 「あかん、学校帰るで。練習しよ。」 「まぁええたい。も一緒にいきなっせ」 「あかん。あんたほんまいい加減にしーや。」 「わかっとーよ。すぐ帰るたい。」 「あんた今の、嘘やろ?思ってないやろ?」 千歳のおすあたしの自転車の後ろにまたがりながら、千歳の言うこと全てに「あかん」と言うのだけれど、千歳があたしの言うことを聞いた試しなんか、一回もないことを思い出してため息をついた。結局、自転車をこぎ出した千歳が大人しく学校に戻るはずもなくて、ぐるぐるといろんな所をまわるんに付き合わされた。 たまに後ろに首をまわして、楽しそうに話しかけてくる千歳に、こいつほんま何考えてるんかわからん。とあたしはずっと首をひねらせた。でも途中で、謙也の自転車をほったらかしにしてきてしまったことを思い出して、千歳の背中に体重を預けながら、そんな自分にちょっと落ち込んだ。 千歳はあたしの様子に、「、疲れたんじゃなか?」と心配そうな声をかけてきて、誰のせいやねん。って思いながらも「そんなことないよ。」と返事する。 あたしは甘い顔したら、千歳が調子にのるって知ってるのに。ほら、また嬉しそうに「そんなら大阪城公園も行くばい。」って、自転車の速度あげる。あーまたか。 ---------------------------10.03.03 千歳ってどんな子を好きになるかわからない。 |