「ー。真田が廊下で呼んでるけど。何かしたの?」 ある人物に呼び出された。 その人物とは、うちの強豪テニス部の副部長をつとめている真田弦一郎君だ。その肩書きと名前の通り、屈強で精悍な出で立ちだ。風紀委員長も務めていて、校内で生徒をたしなめる怒鳴り声が聞こえてきたりするので、あたしもよく知っている有名人だ。 でも、その真田君があたしに何の用だろう? 話した事ないし、クラスも違うし、風紀だって、先月に体調不良で遅刻をしてしまったくらいだ。それは柳生君にちゃんと届けたしなぁ。と、席を立って廊下へ向かいながら、考えを巡らせる。 「あの、何か?」 「うむ。俺は3ーAの真田弦一郎だ。」 「はい、知ってます。」 「そうか。、今日はお前に交際を申し込みに来た。」 「!」 真田君のいきなりすぎる言葉に、周りが水を打ったように静かになった。あたしだって声がでない。人のいる廊下で告白する人なんか、初めてみた。しかも、生活態度の指導してるイメージしかない真田くんがだ。でも、当の本人は顔色一つ変えずに、固まったあたしを見つめている。 「どうした、」 「いや、すごい予想外のことを言われたから・・・」 「うむ。俺自身もついこの間までは、恋愛などまだ早いと思っていたからな。」 「いや、そういうことじゃなくて。」 真田くんのちょっとずれた答えに、あ、この人ちょっと天然なのかな?と感じる。 「で、お前はどうなのだ?」 「え?あたし?」 「そうだ。俺と交際できるのかと聞いている。」 「いや、あたし今、初めて真田くんと話したし」 「それは俺も同じだ。」 「いや、そういうことじゃなくて。」 さっきと同じ言葉が口から出てしまった。 「あたし、真田くんのことよく知らなくて、」 「これから知っていけば良い。そんなことは気にするな。」 「!?・・・うん、そうなんだけど、いきなり交際とかは」 「交際せずに仲良くなるとはどういうことだ?」 「うん、そういうことじゃなくてね?」 あたしが本日3回目の言葉を口にする。 そんなあたしの態度に真田くんがいきなり大声をあげた。 「、なんだお前は!さっきからそうではないなどと!俺もこうやって、真っ直ぐに来ているのだから、お前も正々堂々と勝負せんか!!」 真田君の大声が、廊下に響き渡る。その鬼の様な顔つきは、もはや告白しているとは思えない。あたしテニス部じゃないのに! 周りのみんなが「さん、何やらかしたの?」って目であたしを見てる。先生や柳生君や丸井君まで遠巻きに様子をうかがっている。校則違反もしてないし、授業だって真面目に受けてるし、あたし真田くんに怒られることなんか一切してないのに。 勝負?勝負ってなんの勝負??あ、あたし、今ちょっと泣きそう。 恋の一本大勝負! ---------------------10.03.07 |