「ないないないない!」









放課後の教室、あわてて叫べば教室の端の席にいる宍戸くんから「何がだよ?」と声がかかった。









「えっと、今度の球技大会のみんなの希望聞いたプリント。あれ大事なのにー」






あたし、体育の先生に頼まれたんだよーとぶつくさ呟けば、宍戸くんは少し離れた自分の席から、ガタガタと机の間をぬってあたしのとこまで来てくれた。あたしと宍戸くんは付き合ってるんだから、なるべく近い席の方が良いのにな。でも、付き合ってるから先生があたし達の座席をなるべく離したがってるらしく、あたしはちっとも宍戸くんの近くの席には座れない。







「机ん中は?」




ちょっと怠そうな表情をしながら、宍戸くんがあたしに訪ねる。あたしはうっかりしていることが多いので、もう毎度の事というような顔だ。







「んーない」
「鞄じゃねぇの?」
「ちょっと待ってね、・・・無いなぁ」
「そこの音楽の教科書の下は?」
「無い・・・。」







宍戸くんが指示してくれてる通りにプリントのありそうな場所を探していく。途中でノートが落ちたので、拾おうとしてかがんだら、宍戸くんがあたしスカート後ろ側を引っ張って、パンツが見えないようにしてくれた。ナイスフォロー、宍戸くん!






「こっちにないかなー」






自分の席には見当たらず、隣の席で寝ているジロー君をどかして、ジロー君の机を探してみたけどやっぱり無くて、あれ明日の体育の授業で先生に渡すつもりだったのに。と途方にくれる。そんなあたしに、宍戸くんが「最後に見たのどこだ?」と聞いてきた。







「今日の昼休みに、ジロー君の希望を聞いて書いた。」
「5限目って、英語だろ?英語のファイルにあるんじゃねーの?」
「あ、そっか」








あたしはもう一度机の中を探って、自分の英語のファイルを取り出した。パラパラとめくると宍戸くんの言った通り、英語のプリントに混じって球技大会のプリントが出てきた。「あった!」と喜んで声を上げれば、隣の宍戸くんに「ちゃんと探せよなー」と文句を言われた。






「探したのにな」
「激ダサだぜ」





宍戸くんの呆れたような言い方にあたしが弁解をしたら、お得意の激ダサだぜをちょうだいした。ちょっと面白くなくて、「げきださだぜー」と宍戸くんの真似をしたら、英語のファイルを丸めたやつで頭をぽこんと叩かれた。















「人がせっかく手伝ってやったってのに」
「ごめんね、宍戸くん。ありがとう」







あたしの態度にぶつくさ言う宍戸くんに、今度はちゃんとお礼を言ったら宍戸くんはなぜか照れたらしく、「おう」とか言って半笑いで頭を掻いていた。お前が激ダサだぜ!















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激ださだぜ!