「2組の中本さんって、可愛いね」 あたしが言うと日吉は眉間に皺をよせて「何いっちゃってんのお前ー?」みたいな顔をした。 (うんまぁ絶対言わないけどね) あ た し の ! シ ニ カ ル ボ h イ ! 食堂の隅で二人でランチを食べてる、なんて恋人らしいシュチュエーションなのに!だ。 日吉はさっきから黙って、自分のやたら豪華なお弁当を黙々とたべている。日吉のお弁当は でっかい重箱に入ってて、大袈裟に言えば喋る暇も無いくらいに口を動かし続けなきゃ食べきれないくらいだ。どんな胃だよ日吉。 「ほら、2組のあの細くて美人の中本さんだよ、日吉いっつも見てるじゃん?」 その一言で日吉はやっと箸を止めて、「見てねぇ」と言った。しかも睨んでいる。 あたしは知っている。日吉が2組と合同の授業とかがあるとチラチラと中本さんをみたり、中本さんの席の近くにあるゴミ箱にゴミを捨てに行ったり。そりゃぁ結構長い間付き合ってたら、ひねくれた彼女よりも可愛い子をみたくなるだろう。あたしだってジョー似の男前がいたら、間違いなく同じことするだろうし。(むしろ日吉が目の前にいても携帯番号とか聞くし) でもいくら長いこと付き合ってたって、あたしが日吉のことを好きなのは揺るぎのない事実で、他の女の子をみられるのは少しおもしろくない。 その上、折角2人でお昼を食べているのにずーっと黙って食べられても! 「わざと中本さんの後ろ通ったりしてるじゃん」 「・・・」 「( 無 視 です か !)」 「コレやるから黙れ」 そういって日吉がお得意の箸使いであたしの陣地に名前は知らないけど黄色いうずまきを入れた。今日のあたしのお昼は氷帝唯一の庶民メニューのうどんだったから、その練り物みたいな物体は汁をすってグダグダになったけど。 「うっわー絶対可愛いよ。悔しいなぁー」 あたしは残った汁の上に箸で油大陸を作りながら、しつこく中本さんは可愛いと言い続けた。 (さりげなくヤキモチもやいてみた) そんなあたしに日吉は鬱陶しそうな顔をするのかと思ったら、 「俺はの方が可愛いと思うし好きだけど」 そう言って、滅多に見ることのない片方の口の端を持ち上げただけの意地の悪くて格好いい 笑顔であたしを見た。 「………(意地悪だ、あたしがその笑顔に弱いのは知ってるくせに)」 「…(あ、照れた)…………嘘だし」 わーひよしくんったら、ロマンもくそもねーなぁー! ---------------------------------- もしあなたの名前が中本さんだったらごめんなさい! |