えーと、あの子は吹奏楽部だから月曜日の班で、この子は図書委員だから水曜日か、あ、でもこの子、水曜は習い事がある日っていってたなぁ。どうしようかなぁ。手元のプリントを見つめて、来月から始まる放課後グループ学習の人数の配分を曜日ごとに考える。
放課後の教室には人はまばらで、あたしも早く帰りたい。という急いた気持ちが思考をにぶくして、余計に手が進まない。でも、隣の男は役に立ちそうにないしなぁ。













「で、そこで俺様が、」






隣の跡部がまた口を開く。さっきから、あたしの隣の席に座って何もせずに、俺様が、俺様がとうるさい。あたしがこの作業してんのわかんないの?
だいたい、先生がこれ頼んだの、あんただったじゃん。あんたも「問題ないですよ、任せてください」って良い笑顔で引き受けてたよね?それが、先生が教室でてった瞬間に、あたしの方振り向いて「おい、。分担な」って何?しかも、あんた喋ってばっかであたししかやってないし。







「おい、。聞いてんのか?」





あたしはうんざりして、跡部の話をほとんど無視しているのに、空気をいっさい読まない跡部はあいかわらず偉そうに話しかけてくる。さっきから、部活での自分の活躍や、この前の休日の過ごし方はとかの情報をずっとこっちにむかって垂れ流してくるのだ。跡部は。






「聞いてないよ。」
「あーん?聞けよ」
「だってあたし、今これやってんじゃん!」







無神経な跡部の態度にちょっとイラッとしたあたしは、怒りを示すために軽く机を叩いた。だって本当にむかついたんだもん。そしたら跡部は「ああ、そうか」なんて言って、意外にも大人しく引き下がった。なんだ、そこは普通なのかよ。






黙ってしまった跡部を横目に、あたしは作業に集中する。
隣の跡部は机に肩肘をついたまま、何もしないでぼーっとしてるようにみえる。
跡部も手伝ってくれればいいのに。本当に何もしないもんだから、沈黙は沈黙でちょっとつらいなぁ。そう思って、大まかなグループが決まったきりの良い所であたしは、持っていたペンを置いた。









「跡部ってさ、」
「あーん?」
「よくしゃべるよね」







あたしがその言葉を言った瞬間に、跡部が固まった。
心なしか顔が紅い気がする。その顔に、あたしの胸に少し嫌な予感が過ぎる。
まさか、そんなこと言われたの初めてとかじゃないよね?そんなに喋るのに。


跡部はしばらく黙った後に、「お前、二度と俺にそういうこと言うなよ。」と、少し怖い顔をして言った。どうやらあたしの予感は当たったらしい。






「あ、ごめん。」
「喋る男なんざ、言われたって嬉しくねーよ」
「あ、そういうの気にするんだ。」
「良いだろ、別に。」
「うん、跡部ふつうだね。割と」






拗ねたような言い方にあたしがけらけらと笑うと、跡部はまた良い顔をしなかった。






「だいたい、お前は俺のことなんも聞いてこねぇから、俺が話すしかねーだろ」






ああ、そうか。普段は色んな女子から質問攻めされてそうだもんなーと心の中で思った。じゃぁ何か、サービス精神だったのか。あの怒濤の俺様トークは。
そう思うと、なんだか跡部が可愛らしくなった。そういえば、クラスが違った去年は、跡部と話すなんて考えもしなかったけど、同じクラスになったら意外と話せる人だったしなぁ、とまだ少し不機嫌そうな跡部の顔を見ながら思う。









「跡部って、意外と気を使う方なんだね。」




「うるせーみんな俺様にひれ伏せば良いんだ。」




そんな顔でそんなこと言われても。
言われ慣れてない言葉だったのか、焦った顔をして暴言を吐き捨てた跡部を見つめながら、あたしはまぁいいかと思うのだ。今の事があったから、これからの俺様トークは多大なる愛を持ってして聞き流せることだろう。「それで、こないだの休みはどうしたの?」跡部の話の続きを催促しながら、さっさと仕事を終わらせて帰宅するべく、あたしは目の前のプリントに意識を戻した。






























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企画・Empire of ice様。参加させて頂いてしあわせです。


ヒナアットマシュデリ