楽しい楽しい学校に行くまでの電車の中は、人、人、人とほんとに人間の乗り物かよと思うくらいの人ごみで中年のサラリーマンの油の臭い、派手なお姉さんの香水の臭いが混ざり合ってとても苦痛だ。
今日はあいにくの雨で、いつもよりもたくさんの人が車両の中につめこまれてて、熱気が充満していた。あたしは扉の前でギュウギュウとガラスに押し付けられる。息がくるしくなるくらいに。

(ちょっと、つぶれる!)


あたしは背中をむけて立ってる男の子と押し合いっ子をして人ごみに抵抗してたけど、よくみるとその子はうちの制服をきていたので、バレたら気まずいなぁと思っておとなしく押しつぶされることにしたのだ。でも、あまりにも押させるのでかばんを抱えてスペースを作ろうと思い、かばんをズリあげると前の男の子の背中にズルズルと押し付ける状態になってしまったので、その子が迷惑そうにコッチを振り返った。


「あ、海堂くん・・・」

「先輩じゃないっすか」


そう、まさに知り合いで、あたしがマネージャーとして属する部の部員だったのだ。海堂君はこっちに向きなおったのであたしは「人、多すぎだよね」とごまかし笑いを作った。
(だってさっき押してたの怒ってたらヤだし!)
そうすると海堂君は人ごみの圧力からあたしを守ってくれるように、あたしの背中にある扉に手をおいて、熱気のせいだろうか、少し顔を紅潮させてそれはそれは色っぽい表情で言った。



「・・・先輩、大丈夫っすか?」





(きゅんっ!!)



 
トキメキ